
株式会社 Liquid(Liquid、リキッド)の藤井です。経歴としてはビジネスサイドで好奇心の赴くままに様々な事業に携わってきました。2年前に Liquid に参画し、現在は外国人向けデジタル ID ウォレットの事業責任者を務めています。AI 全盛の時代、世の中は最適化された論理的な行動に基づくもので埋め尽くされていきますが、新たな価値を生み出すのは「違い」だと考えています。数多くの事業が生まれては消えていく事業開発の領域で、価値のある1%の違いを生み出すことに貢献できればと、日々走り回っています。

弊社は ELEMENTS グループ として東証グロース市場に上場しており、主力事業は eKYC(オンライン身元確認)です。今回ご紹介する「GPASS」は、その eKYC として国内7年連続 No.1の LIQUID eKYC を提供している株式会社 Liquid が新たに展開している外国人向けのサービスです。

eKYC はスマートフォン1台で本人確認を完結させる技術です。銀行口座開設、クレジットカード発行、携帯キャリア契約、Web サービスなど、様々なシーンで本人確認や年齢確認に利用されています。マイナンバーカード、運転免許証、在留カードなどの身分証をスマートフォンで読んで確認を行うことで、対面や郵送の必要なく、アカウント開設や本人確認を可能にします。

GPASS は、eKYC を活用しながら、外国籍の方々が日本で社会生活を送るために自分の情報を証明できるデジタル ID ウォレットです。身分証だけでなく、本人が入力する情報や社会生活から自動的に生成される情報を含め、詳細な個人情報を一箇所に蓄積し、サービス利用時や雇用時に活用できる仕組みとなっています。
特に外国人の証明の観点で社会課題となっているのが、外国人労働者を雇用する際に在留カードをいかに正確に確認し、不法就労の発生を防止できるかという点です。在留資格とその就労可能な範囲をスムーズかつ正しく認識できる仕組みは、雇用する事業者側に求められるだけでなく、就労する外国人本人にとっても必要なサポートとなります。GPASS はこの需要へ向けてサービス提供し、これまでにない仕組みとして多くの事業者様に採用いただいております。
デジタル ID ウォレットは、データの提供元と提供先がセットになって初めて価値を発揮します。ただ ID ウォレットを提供するだけでは社会実装は進みません。既存の課題を解決する形で ID ウォレットを提供し、事業として成立させながら広く展開していきたいと考えています。

人手不足を背景に外国人労働者は急増しています。直近17年で約5倍に達しており、2030年、2040年に向けて、今後5年、10年でさらに2倍、3倍になるという試算もあります。一方、正規の在留資格がないまま日本に留まってしまっている不法残留者は約7万人にのぼります。事業者が不法残留者を雇用した場合、「不法就労助長罪」に問われる可能性があり、昨今では、外国人労働者をめぐって以下のような問題が表面化しています。
GPASS は在留資格の正確かつ継続的なチェックにより事業者を強力にサポートする事で、労働力確保の選択肢として外国人労働者を活用できる環境を整えます。法令・判例を踏まえた漏れのない対応を関係者が一律に行える仕組みを提供し、就労現場における法令遵守に貢献しています。
GPASS の仕組みの全体像をご説明します。外国人が日本で働き、暮らす際の身分証となるのが在留カードですが、近年は精巧な偽造カードも出回っており券面の見た目だけでそれを見抜くのは困難です。そこで IC チップ内のデータを読み取り、電子署名を出入国在留管理庁の発行する証明書で検証し、真正性を確認します。その上で確かに身分証の持ち主ご自身が手続きしていることを証明した上で、在留カードの情報をデータベースに蓄積します。
一方、カード自体は本物であっても、離婚や退学など様々な理由で在留資格が失効する場合があるため、併せて入管庁の Web サイトで有効性を確認する必要があります。弊社はこの有効性の継続確認を含めて在留カードを持つ全ての従業員のデータを最新管理し、採用時から退職まで継続して不法就労状態にない事を証明します。GPASS ではこれに各種アラート、多言語対応、 AI チャット支援などの業務機能をセットで提供し、事業者の労務管理を劇的に効率化しています。
さらに、従業員の入れ替わりの激しい工場や物流拠点など、全ての外国人労働者を把握することが難しいケースもあります。そういった環境では、顔認証で確かに出勤すべき人が出勤している事を確認します。事業者が直面する課題に応える形で、デジタル ID ウォレットを提供していく、それが弊社のアプローチです。

将来的には、VC(Verifiable Credentials、検証可能な資格証明)なども利用して、学生証や運転免許証などのあらゆる資格情報を GPASS から検証、活用できるようにしたいと考えています。また、例えばサービス利用時に年齢だけを提供するなど、溜まったデータを選択的に開示することも実現するという将来像を描いています。もちろん他社サービスとの API 連携を通じて、さまざまなユースケースへの展開も可能になります。


GPASS は純粋なデジタル ID ウォレット部分だけでなく、現実主義的に社会課題を解決し、サステナブルな仕組みとして浸透、成立していくことを目指しています。構造としては、オンチェーン(on-chain) やディセントラライズド(Decentralized)ではなく、オフチェーンでセントラライズドな仕組みです。その上で、GPASS は外国籍の方本人に最も近い位置で寄り添い、本人がやりたい事に本人の意思を反映させる事を追求しています。
図は左側にデータ発行者、中央にデジタル ID ウォレット、右側にサービス提供者というかたちで整理しています。 既存社会ではあらゆる形式でデータの提供が行われます。それぞれにフィットする形でデータを取得し、本人の意思表示を介して、サービス提供者が利用したい多様な形式で情報を提供します。ここから始めて、理想的な情報活用の在り方を日本国内、ひいては世界に広げていきたいというのが GPASS の考え方です。
実際のデータのやり取りとしては GPASS サーバーがハブとなりますが、ステークホルダーごとに連携形式は異なります。そのバックエンドに Authlete を使うことで、これらをまとめて安定かつ高速に連携できます。
就労先などのサービス提供者が、雇用というある種の「サービス」を提供することで、それが日本における外国人材の信用となり、そのサービス提供者が今度はデータ発行者にもなるといった双方向の関係を築きます。本人は GPASS に蓄積された情報を使って新たなサービスを受け、その結果がまた必要に応じて GPASS に蓄積するという循環する仕組みを作ります。現状のビジネスモデルとしては個人から対価を得る事が難しいため、サービス提供者が外国籍の方本人からもらい受ける価値(労働など)の一部を利用料に変換する形で対価としていただき、GPASS の運用と改善を継続しています。
GPASS における Authlete 活用の利点は以下の3点です。

GPASSは、現実社会の多様な情報連携方式にフィットする必要があります。Authlete は新しいパートナーを開拓する際、必要な連携開発を省略してビジネス構築にスピードをもたらしてくれます。

GPASS はミッションクリティカルな個人情報を扱う事業領域にあり、一度でも漏洩すれば事業継続が難しくなります。プロトコル設計漏れや構築ミスは許されません。認証・認可の専門的知見を持つ Authlete の精度の高いサービスを利用できることは、大きな利点となります。

既存の情報管理サービスとの競争において、GPASS には常に高品質の UX が求められます。Authlete はサービスの裏側で、ステークホルダーの体験を損なうことなく安定的に稼働し続ける可用性と信頼性を提供してくれます。
GPASS の顧客が求めるものは、時とともに変化し、より高度化しています。また、それに伴い法令も変わっていきます。こうした環境の変化に対応しながら、GPASS は社会環境にフィットする形で価値を提供し続けています。「GPASS Loves Authlete」、Authlete は GPASS が安定して高品質なサービスを提供し続ける事を強力にサポートしてくれている心強い味方です。