4. スポーツ & エンターテインメントセッション: ファイターズ・Fanplus・playground

スポーツ & エンターテインメントセッション: ファイターズ・Fanplus・playground

この文字起こしは、2024 年 12 月 11 日に開催された Authlete Customer and Partner Meetup 2024 のパネルディスカッションです。 ファイターズ スポーツ & エンターテイメントさま、Fanplus さま、playground さまに、スポーツ & エンターテインメント特有の要件や OAuth/OIDC 実装のきっかけ、そして Authlete 導入の効果についてお伺いしました。

登壇者

  • パネリスト
    • 株式会社ファイターズ スポーツ & エンターテイメント 管理統轄本部 管理統括部 IT推進部 部長 三浦義宜氏
    • 株式会社 Fanplus 執行役員 山岸浩一氏
    • playground 株式会社 エンジニアリーダー 藤田航大氏
  • モデレーター
    • 株式会社 Authlete ジャパンカントリーマネージャー 工藤達雄

はじめに

工藤 (Authlete): Authlete は、金融、Eコマース、ヘルスケア、メディアなど、さまざまな業界のお客様にご利用いただいています。最近では、スポーツ&エンタメ業界のお客様も増えており、Authlete の活用事例が広がっています。この業界における Authlete の活用事例は、他分野のお客様にとっても参考になる点が多くあるかと思います。今回のパネルディスカッションでは業界動向や Authlete の活用事例についてご紹介し、皆様のビジネスに役立つヒントや気づきを提供できればと考えております。

自己紹介

ファイターズ スポーツ & エンターテイメント

株式会社ファイターズ スポーツ & エンターテイメント
管理統轄本部 管理統括部
IT推進部 部長
三浦義宜氏

三浦 (ファイターズ): ファイターズスポーツ & エンターテイメントの三浦と申します。F ビレッジは「世界がまだ見ぬボールパークをつくろう。」をコンセプトに、2023 年 3 月に開業しました。2 年目の今年はチームの成績も良く、初年度以上の来客数・来場者数を記録する見込みになっています。

ファイターズ スポーツ & エンターテイメントの設立は 2019 年、比較的新しい会社です。元々は北海道日本ハムファイターズという球団運営会社の中にすべて入っていたんですが、F ビレッジの開発に伴い分社化しました。チームが北海道日本ハムファイターズ、事業・管理部門がファイターズ スポーツ & エンターテイメント、と分かれています。

業務内容としては、施設運営、全体的な各周辺地域の開発、プロ野球の試合興行を担っています。会社の人数は、パートナーさんとかも含めるとかなりの数になるんですが、社員としては 140 名ぐらいになっています。

所在地がちょっと特徴的なところです。F ビレッジを作る中で、まち作りというテーマを持ってやっています。その中で自治体さんと色々協力してやってるところもありまして、公式に「F ビレッジ」という名前を住所として承認いただいています。

私は現在 IT 推進部の部長をやっています。元々はシステムエンジニアで、関東の方で 15 年ぐらい働いておりました。その後 2020 年に、私は北海道出身ということもありまして U ターンを決意した際に、今の北海道日本ハムファイターズの募集があり、縁あって採用されました。

F ビレッジの開業までは、新しい球場への完全キャッシュレスの導入や、マーケティングプラットフォームの構築を推進していました。今年から IT 推進部を新しく立ち上げることになり、現在はそこを担いながら、フロントサービス以外にバックオフィスの DX 推進も担当しております。

Fanplus

株式会社 Fanplus
執行役員
山岸浩一氏

山岸 (Fanplus): 株式会社Fanplusの山岸と申します。現在、ファンサイト技術部の部長と執行役員をやらせていただいております。2012 年に、前身となる EMTG(エンターテイメント・ミュージック・チケットガード)という、チケットの転売を防止する会社から始まって、アーティストが利用するサービスとして、ファンクラブサイト事業の開発をしておりました。2018 年に株式会社エムアップの子会社になってファンクラブの事業を統合、2020 年に現在の Fanplus という新しい会社としてスタートしました。

Fanplus を一言で申しますと、ファンクラブサイトを運営している会社です。アーティストさんのファンクラブの事業や、それに連動するいろいろな IT のサービスを提供し、アーティストとファンのエンゲージメント、繋がりの強化をメインとしています。

弊社は Plus member ID という独自の ID 基盤を持っています。ファンクラブの事業を主軸に、ファンクラブのサービスやアプリのサービスと、そこに連動して、EC、アーティストさんのグッズ販売、電子チケット、生配信、オンラインガチャ、クラウドファンディング、あと新しく NFT マーケットもやっています。アーティストさんに繋がるような IT サービスを全般的に包括して、それらすべてがひとつにまとまることで、ファンのエンゲージメントを高めていけることが弊社の強みです。

Dear U bubble という、韓国を代表する、アーティストとファンが繋がれるトークアプリがあります。今回韓国の Dear U 社と提携して日本向けに bubble for JAPAN を立ち上げました。ローンチにあたっては Plus member ID を活用したエンゲージメントの強化を視野に入れています。

playground

playground 株式会社
エンジニアリーダー
藤田航大氏

藤田 (playground): playground の藤田と申します。もともと品質保証の仕事をしていましたが、エンジニアとしてのキャリアを playground でスタートし、現在 4 年目になります。現在はエンジニアリーダーとして開発チームのマネジメントやプロダクト全体の推進を担当しています。

当社は 2017 年設立で、今年で 8 年目を迎えます。社員数は約 50 名で、スタートアップ規模の企業です。

スポーツ・エンタメ領域において、電子チケットの導入、不正転売防止、ライブ配信、自社サイト構築、Web3 対応など、さまざまなニーズに対応するサービスを「MOALA」というブランドで展開しています。たとえば、toC 向けには電子チケット、toB 向けにはファン管理システムなどのプロダクトを開発しています。Authlete は toC 向けの ID 管理基盤として活用しています。

チケットぴあさん、ローソンチケットさん、イープラスさんといったチケットエージェンシーさんや、東京ドームさん、JLPGA さん、ほかにもバンダイさんのトレーディングカード事業など、幅広い領域でご利用いただいています。

本日のトピック

工藤 (Authlete): まず、業界特有の特性・特徴について伺った上で、その中で ID がどう役割を果たすか・果たすべきかを伺います。2 点目として、なぜ OAuth/OIDC が必要か・どういった要件があるか・実装・実現においてどういった課題があったかを伺います。3 点目として、Authlete を知ったきっかけ・Authlete を選んだ理由・実際に使ってみてどうだったか、といったお話を伺います。最後に、今後の展望ということで進めていきます。

業界特有の特性・特徴

工藤 (Authlete): スポーツ & エンタメ分野は、いわゆる B2C サービスとは異なる部分があるかと思います。たとえば、特定のイベントで急にトラフィックやアクセスが増えたり、特定のアーティストやスポーツチームあるいは選手に対しての関心・興味がすごく深かったり、また、アーティスト・ファン・チームを起点に周辺のビジネスが生まれたりする点などです。過去の経緯を踏まえて、スポーツ & エンタメならでは、といった点を伺えればと思います。

イベントや「バズり」によって大きく変動するトラフィック

三浦 (ファイターズ): 平時とピークの差が極端に出ます。チケット発売のタイミングには一気に集中して、あっという間に売り切れます。しかし、まだチケットを売っていない時期には全く人が来ない。それくらい上と下が外れます。

さらに野球の場合は、我々の球場は最大 35,000 人ぐらい入るんですけども、試合当日にフルキャパになるとお客さまが数時間に集中していらっしゃいます。我々の球場がある北広島市の人口は 56,000 人ぐらいですが、そこに 35,000 人ですから、人口が 1.5 倍増えるような環境になります。瞬間風速が通常の比ではないのが特徴的だと思います。

工藤 (Authlete): チケット販売や集客の観点から考えると、playground さんの電子チケットと共通点がありそうですね。

藤田 (playground): 負荷の観点では、イベントが土日に集中するため、エンジニアのシフト体制を組んで対応しています。たとえば数万人規模の来場者を 1 時間以内にスムーズに入場させる必要があります。ライブイベントでは時間の遅れが許されないケースも多く、そのような厳しい要件に対応する必要があります。

工藤 (Authlete): アーティストが何か活動することによって突然バズる、みたいな点はどうですか?

藤田 (playground): 吉本興業さんでは毎日劇場で行われるお笑いライブの配信を、すべて弊社のシステムで対応しています。1 日 100 本以上のライブ配信を行っており、SNS での拡散により突発的にアクセスが集中することもあります。

山岸 (Fanplus): アーティストさんの活動によってトラフィックが瞬間的にスパイクする点は、本当におっしゃる通りです。ファンクラブという観点でいえば、皆さんがファンクラブに入る理由はチケットを入手するためです。入場や販売のさらに前段、チケットを抽選で買いたいというときに、ものすごいトラフィックが来ます。

もうひとつ、アーティストさんのメディアの露出でいきなりバズるところがすごく大きいです。年末年始、たとえば紅白歌合戦のような年末年始に一番見られているような番組に、今年一番ブレイクしたアーティストさんが出ると、その後のサイトへのアクセスはすごいものがあります。そういったところは弊社もシフトを組んで対応しています。

三浦 (ファイターズ): 今年のファイターズはクライマックスシリーズに初めて進出しました。その時のチケット争奪戦は今までに経験がないぐらい急激に伸びました。良い方向でバズるケースもあれば意図せずバズるケースもあるので、ちょっとここら辺は本当に読めないところは実際あったりします。後者の方向でもサイトアクセスは伸びるので、本当に読めないというのが多いですね。

「推し活」から広がるコミュニティと、エンゲージメントの蓄積

工藤 (Authlete): ファンクラブがあることによって他とは違う点はいかがですか?

山岸 (Fanplus): 繋がりを求める、言葉を変えると「推し活」が分かりやすいかなと思うんですけど、そこに集まるという、コミュニティのようなところがあります。

アーティストがもちろん中心にはあるんですけど、ファン同士で繋がっていったり、ファンクラブというエンゲージメントの中で勢いが成長していったり、こちらが予期しないところで会員が伸びていったりします。バズらせるというよりも、成長していく力が自然と強くなっていくところが、ファンクラブのひとつの特性なのかなと思います。

そこから生み出されるアクセスの集中や負荷は、本当にコントロールできない部分があります。アーティストさんの活動と並行して、そういう勢いがいつ来るのかみたいなところは、他との違いとして大きいと思います。

工藤 (Authlete): Fanplus さんは非常に大きな会員基盤をお持ちです。それは初めから想定されていたのでしょうか?

山岸 (Fanplus): そこまでは予測できていませんでした。最初は会員基盤を各アーティストに対してひとつひとつ作っていたりしました。しかし、このアーティストが好きな人はこっちのアーティストも好きだといった横の繋がりが、実は結構大きいんです。弊社が成長していく中で、より強固かつ手軽に参加ができるしくみとして、1 つの ID・1 つの基盤を早くから作ってきました。

もうひとつ、これはエンタメではなく弊社の特性かもしれませんが、ID を長く利用することによって生まれる価値があります。たとえば「推し活」では、長い時間をかけていろいろ積みかさねられたすべてが ID に集約されていきます。そういった意味で、ID の重要性を鑑みてひとつの基盤にするべきというところが、今できているのかなと思っています。

「野球のコア層」以外にリーチするためのマーケティング基盤

工藤 (Authlete): マーケティング用途の点ではいかがですか?

三浦 (ファイターズ): 我々が ID 基盤を展開している最大の理由はマーケティングプラットフォームを作るためです。ただ野球場を作るではなく、観光地を作りながら中心に野球事業があるというのが、F ビレッジのコンセプトです。なので極端な話、野球好きじゃない人も来てくださいというまち作りをやっています。

いままでのファンクラブだけでは、野球のコア層にしかリーチができないことになってしまいます。マーケティングのために、いろいろなところの様々な情報を多角的に集めるには、共通的なID基盤が必要です。そのために新しいアカウント基盤を作りました。

「あるアーティストが好きなお客さんはこのアーティストも好き」と同じように、我々の場合も、「こういうお客さんはこういうところでもの買うんだね」といったところは重要だと感じています。

イベント、配信、リセールなどのサービスを複合的に提供

工藤 (Authlete): マーケティング観点と、エンゲージメント観点。そして先ほど藤田さんのスライドを見て思ったのが DX 観点、多様なサービスを複合的に展開するという点はいかがでしょうか。

藤田 (playground): イベントの来場、配信の視聴、リセールの利用など、ユーザーの様々なアクティビティを ID 基盤で管理できることは、マーケティングにおいて大きな強みになると思っています。たとえばデータを重要視するアーティストの事務所さんなどは、事務所さん側のシステムだけでは横断的なデータ収集が難しい場合も多いので、ご活用いただくことがあります。

工藤 (Authlete): 非常に面白いですね。一人のお客様に対して、いろんな方面からサービスを展開して、全部をつなげていく、ということですね。

OAuth/OIDCのニーズ・要件・実装の課題

工藤 (Authlete): 今回、ID の使い方や実装方法は各社各様ですが、OpenID Connect (OIDC) や OAuth という標準仕様を、みなさん採用されています。まずは経緯をお伺いします。

グッズ販売の移管を契機に OIDC を採用し、外部サービス連携に拡大

三浦 (ファイターズ): 2021 年に MLB とかのグッズも販売している会社さんと提携し、自社でやっていたグッズ販売をそちらに移管することになりました。そのときに会員基盤とどうつなげるかという話になり、その提携先から「OIDC という仕様に準拠してください」と言われまして、それで導入したのがそもそものスタートです。

当時はグッズ販売の EC サイトだけだったんですが、ボールパークの開業準備が始まった段階で、外部サービスとの連携を進めるには共通の標準仕様への準拠が必要であると考えていました。なので、マーケティング基盤のコアには標準仕様である OIDC の採用を決めていました。

そして今、いろんなサービスとつながっています。他社のサービスでいいますと、地域自治体と組んでファイターズ専用のふるさと納税サイトを新しく作ったりしています。そこも OIDC でつないでいます。いろんなデータが集まるようなイメージ・世界観を常に意識しながら進めています。

工藤 (Authlete): 今伺った通り、ファイターズさんの場合は、2 つの段階があります。まず E コマースサイトとの連携のために OIDC を実装するという局面があったということと、次に、さらに ID 基盤として、よりつなぎやすいかたちにしていくというところで、さらに活用されています。

提携先の海外サービスが必須要件として OIDC 準拠を要求

工藤 (Authlete): OIDC のきっかけが外部サイトからの要件だったというのは、実は最近我々もお話を伺うことが多いです。Fanplus さんの場合もそのような経緯だったかと思います。

山岸 (Fanplus): 韓国の Dear U 社が提供しているコミュニケーションアプリを「bubble for JAPAN」として日本向けに展開するとなったときに、イチから会員基盤を作るよりも、既存の Plus member ID に向けて提供する方が確実でした。また、それを既存会員のエンゲージメントにつなげることが弊社としての必須要件でした。その時に Dear U 社から連携仕様として OIDC 対応を求められました。その時点で導入が確定しました。

工藤 (Authlete): 韓国の Dear U 社が「OIDC で」って言ったのは、複数の選択肢があって OIDC なのか、それとも、有無を言わさず「OIDC やって」という感じですか?

山岸 (Fanplus): 「やって」という感じですね。個人情報やセキュリティに関して、韓国は日本に比べてよりシビアに考えているのだと思います。そういった意味では、そこは譲れないというか、これでやってくださいと仕様化されていたので、そこに合わせるようなかたちで動いていきました。

工藤 (Authlete): ファイターズさんのところも、提携先の E コマースサービスは MLB などでも使われているとのことですが、そのようなグローバルで展開しているサービスだから、OIDC でって感じですか?

三浦 (ファイターズ): そうです、全く同じです。その会社は NBA や MLB などアメリカを中心にかなりシェアを持っています。世界で売れるようにとなると、やはり OAuth とか OIDC がベースとしてある前提で、そこに準拠してくださいという感じです。

外部サービス連携の推進には OAuth/OIDC 標準への準拠が必須

工藤 (Authlete): ファイターズさんの場合は、さらにいろいろなところと連携するための ID 基盤ということでした。これは playground さんと近い部分があると思います。OIDC にしたのはどういった背景があったんでしょうか。

藤田 (playground): 弊社の場合、外部からの要望ではなく、ご利用いただくチケットエージェンシーさんや来場者の利便性を高めるには個人情報をまとめる基盤が必要だよね、という課題感から取り組みを始めました。そのため技術選定は、社内エンジニアが自由におこなえる環境からスタートしています。

また弊社の ID 基盤は外部サービスにも連携いただくことを前提としていたため、できるだけ標準的な仕様にすることが要件でした。そのため、他の技術との比較もおこなったのですが、迷うことなく OIDC と OAuth 2.0 を選びました。以前、RP として外部の OpenID プロバイダーと連携した実績が社内にあったので、技術的な抵抗も特にありませんでした。

Authlete 選定の決め手と導入効果

当初は自作も検討したが、王道の Authlete に行き着いた

工藤 (Authlete): Authlete を選定した決め手やきっかけについて伺っていきます。まず Fanplus さんは、Dear Uさんから、これぐらいの期間内に OIDC 対応してね、みたいな感じで言われたのでしょうか。

山岸 (Fanplus): 開発期間はだいたい半年と決まっていたので、まずはそこに向けてどう動くかを考えました。最初は、自分たちで作れるかどうかを念頭に調べていきました。知見がないからこそ、作っていくことを考えたのかもしれません。しかし調べれば調べるほど、そこに対してのコストは割に合わないな、と。

で、王道の Authlete さんに行き着きました。川崎さんの Qiita を拝見して、Authlete さんを検討させていただいて、導入に至りました。元々の会員基盤・認証基盤にコンポーネントの形で導入できる点も、まさにこれだな、と行き着いた感じですね。

任せられるものは任せるほうが良いと考え、Authlete を選択

工藤 (Authlete): 期限が決まっていて、いつまでにやらなくてはならないという点では、ファイターズさんは、F ビレッジ開業やシーズン開幕を考えた時に非常にタイトなスケジュールであったかと思います。

三浦 (ファイターズ): だいたい 9 月から 10 月にシーズンが終わって、翌年 2 月にはキャンプが始まって、グッズ販売があります。実際、最初に導入した時も、リードタイムがおそらく 2 ヶ月か 3 ヶ月ぐらいしかない状態で対応しなきゃいけない状況でした。そして開発ベンダーさんと議論した中で、Authlete を使うという提案がありました。

自分たちで実装してメンテナンスやセキュリティ対応をしていくのは限界がありますし、時間もありません。任せられるものは外部のサービスに任せるほうが良いと考えました。そして、信用性・信頼性の高さを評価し、Authlete さんを採用しました。

きっかけは Authlete 人材からの紹介。その上でコストや柔軟性を評価

工藤 (Authlete): 私の認識だと、エンジニア界隈で Authlete ってわりと知られていて、OAuth/OIDC やるとなったら候補に上がるのかなと思ってるんですけど、どういったきっかけがあったんですか?

藤田 (playground): きっかけは、業務委託の方から「Authlete が良い」と紹介を受けたことです。そこから私の方で他サービスと比較した上で、コストや柔軟性の観点から Authlete の採用を決定しました。

工藤 (Authlete): その方は、いわゆる Authlete 人材だと思うんですよね。結構そういう方が多くて、他の会社で Authlete を使ったことがあって、別の会社に行ってまた Authlete を使っているというのが最近多くて、非常にありがたいです。

認可基盤は Authlete に任せて、サービス開発にリソースを集中

工藤 (Authlete): Fanplus さんのところでは、それまでおそらくけっこう自社開発されていた部分もあったと思います。OpenID プロバイダーを構築するために Authlete を選んだのは、どういったきっかけだったんでしょうか?

山岸 (Fanplus): 元々 OAuth の知見は多少あって、そこからどうやっていくかを調べていきました。すると、弊社自身でフルスクラッチで作るには、プロジェクトを1つ立てなければいけないぐらいの規模になることがわかりました。弊社がどこに力を入れるべきかを考えた時に、やはりサービスに対して開発コストをかけるべき、それであれば認可基盤をプロフェッショナルに任せるべき、と判断し Authlete を選定しました。

工藤 (Authlete): Authlete を現場で選定して、その後経営層の方に「これ使いたいです」といった話をされたかと想像しますが、その提案はすんなりと受け入れられた感じですか?

山岸 (Fanplus): 概要だけの説明だと、そんなの作ればいいじゃん、みたいな感じになりがちなんですけれど、標準準拠を保守していくコスト、プロジェクトを立てるコストを踏まえて、そこを任せることについては、割とすんなりと決まりました。

スムーズな導入とスモールスタートを実現

工藤 (Authlete): Authlete を使い始めて、どういった点が良かったですか?

山岸 (Fanplus): 弊社は元々 PHP で作っていて、Laravelで Authlete を導入しました。そこのドキュメントが多かったというのもあり、割とすんなりと導入できました。費用面でも、まずどれくらいの流量があるかが見えなかったので、ミニマムで始められるっていうところでも、コストをかけずにローンチまでいけたところはすごく良かったと思っています。

工藤 (Authlete): スモールスタートという点については、ファイターズさんもそういうパターンかと思いますが、いかがですか?

三浦 (ファイターズ): そうですね、Authlete で良かったところは、スモールスタートでできるところもあります。

試合シーズン中のピークに合わせて、臨機応変に処理性能を変更

三浦 (ファイターズ): また、ピークに合わせて柔軟に性能を上げ下げできるところは、非常にメリットが大きいです。試合シーズン中でも、1 週間に 3 試合やったり 6 試合やったりということもあるので、どのタイミングで上げておくか臨機応変に対応できるのは非常にありがたいです。

工藤 (Authlete): 補足すると、今 Authlete のクラウド版、専用サーバーについて、「オンデマンドオプション」の提供を開始しています。これは、ある程度キャパシティを持ったサーバーをこちらで用意して、さらにそれを実際に有効にする場合にはお客様に API リクエストを送ってもらって、1 時間単位・100 RPS 単位でその時だけ性能を上げるというものです。

とくに今おっしゃっていただいたような、特定のイベントなどの発生が予期された場合には、前もってその期間だけ性能を上げておくことが API で実装できるようになっています。

短期間での ID 基盤構築を実現。稼働後は何も意識しなくて良い

工藤 (Authlete): Authlete を使って、開発観点から良かった点は?

藤田 (playground): 開発スピードの面では、Authlete を使うことで短期間で ID 基盤を構築できたのが大きいです。またコスト面でも、他サービスと比べてリーズナブルでした。保守運用の観点では、認可周りのメンテナンスが不要で、常に安定稼働しているのでなにも意識する必要がないのもメリットかなと思います。

また Authlete に詳しいエンジニアが増えていくことで、将来的に弊社が新たなエンジニアを採用した際に、すでに知見がある方が加わる可能性がある点も、保守性の面で安心材料になります。

工藤 (Authlete): いろんな会社さんの求人情報をチェックしているんですが、技術スタックに Authlete って入ってるとすごい嬉しくなります。採用に実際効果があると思うので、ぜひ皆さん書いていただけるとありがたいです。

今後の展望

工藤 (Authlete): 最後に今後の展望をお伺いします。

藤田 (playground): Authlete を活用することで、最小限の工数で高品質な ID 基盤を構築することができました。これからも引き続きエンタメ・スポーツ業界の会社さんに「MOALA」をご活用いただき、各社が得意な領域・伸ばしていきたい領域に注力できるよう、サポートしていければと考えています。

山岸 (Fanplus): 弊社も今、新しいアプリケーションに OIDC を導入し、 OIDC 準拠の ID 基盤ができたところです。今後外部のサービスとの連携や、逆に外部の ID の連携というところで、横のサービスをもっと広げていきたいと思います。また弊社ではメタバースのファンクラブを来春に予定しています。そういったところにも OIDC の ID 基盤を導入していくつもりです。これを標準仕様として、今後ともどんどん広げていきたいな、という風に考えております。

三浦 (ファイターズ): ファイターズには「まち作り」というテーマがありますが、今できているものはまだ全体の 30% という認識です。公開されているものとしては、2028 年には大学移転や JR の新駅の計画があります。周辺自治体と色々連携していくことが今後増えてく中で、共通の ID 基盤を官民連携して拡大していきながら、いろんな人のカスタマージャーニーを捉えられるようにしていきたいと考えています。

工藤 (Authlete): エンタメ固有の話とか、共通する部分とか、たくさんの具体的なエピソードを聞けたかと思います。Authlete に対する期待も、非常に大きいものを感じ、身が引き締まる思いです。今後とも、スポーツ & エンタメをはじめとする、皆さんにご活用いただければと思います。今日は本当にありがとうございました。